マツダの宝「スカイアクティブX」なぜ苦戦

マツダ渾身の次世代パワーユニットのスカイアクティブXがマツダ3、CX-30に搭載して発売されている。
そのポテンシャルの高さについてはいろいろなメディアでも取り上げられているが、ユーザーはどのように受け止めているのだろうか。

クルマ界はこれまでも画期的だったり、すばらしいポテンシャルを持っていながらも短命に終わった技術もある。
スカイアクティブXは、マツダの新世代エンジンに位置付けられる。
低燃費で二酸化炭素の排出量も少なく、動力性能に余裕のあるエンジンを目指した。

そのほかにも先進技術が豊富で、エアーサプライシステムと呼ばれるスーパーチャージャー(過給器)、マイルドハイブリッドシステム、ディーゼルエンジンに使われるようなパティキュレートフィルター、高燃圧噴射システムなどが備わる。

このスカイアクティブXを搭載するのは、今のところマツダ3とCX-30だ。
マツダ3の場合、2Lノーマルガソリンエンジンを搭載した20Sプロアクティブツーリングセレクションの価格は263万6741円だ。
スカイアクティブXのXプロアクティブツーリングセレクションは331万9148円だから、スカイアクティブXは2Lノーマルガソリンエンジンに比べて68万2407円高い。
動力性能に余裕があって燃費の優れたエンジンでも、価格が68万円高いと、相当に購買意欲が強いユーザーでない限りスカイアクティブXを選ばない。

スカイアクティブXは新開発エンジンだから、開発費用の負担も多い。
10年前からさまざまな車種に使われているエンジンなら、すでに生産台数も膨大で償却も進んでいるが、スカイアクティブXにはこの実績がない。そのために1台当たりの開発コスト負担が増えてしまう。

スカイアクティブXは、突出した高性能エンジンではなく、環境性能にも配慮したバランス型のパワーユニットだ。大量に販売して、マツダ車の環境性能を底上げすることを目的にしている。
その使命を果たす意味でも、コスト低減を進めて、価格を抑えて普及させなければスカイアクティブXに込められた願いを達成できない。

引用:<ヤフーニュース>
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200405-00010000-bestcar-bus_all

─ YODOQの見方───────────────────────────

スカイアクティブXは何故それほどまでに注目される技術なのかを調べてみました。

ガソリンエンジンはガソリンと空気の混合気体をピストンで圧縮し、そこでスパークプラグの火花によって着火して素早く燃え広がらせ、その燃焼圧力でピストンを押し下げて力にします。
一方、ディーゼルエンジンは空気のみをエンジン内に吸い込み、ピストンで圧縮したところへ軽油を噴射して、高圧高温となった空気の中で自然に軽油が燃え始めるのを利用し、その燃焼圧力でピストンを押し下げます。
これを実現するため、ディーゼルエンジンの圧縮比はガソリンエンジンの約2倍というのが、従来の常識でした。
その圧縮比の差によって、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べ燃費が良いとされてきました。
ガソリンでもディーゼルと同じように高圧縮で燃料を噴射し、空気の中で自然に燃やせばもっと燃費をよくできると考えたのが、予混合圧縮着火(HCCI)です。
しかし、ガソリンエンジンで圧縮比を高くすると、ノッキングという異常燃焼が起き、馬力が出なくなるだけでなくエンジン本体を壊してしまう懸念があり、HCCIは夢の技術でした。

ガソリンエンジンで従来10前後だったガソリンエンジンの圧縮比を、「SKYACTIV-G」で14にまで高めたことで当時、ディーゼルエンジンの圧縮比は18くらいであり、14でもディーゼルまでは距離があったが、それでも、ガソリンエンジンで圧縮比14というのはとてつもない数値でした。これによって、SKYACTIV-Gはハイブリッド車と同等の燃費性能をガソリンエンジンだけで実現しました。

とはいえ、まだガソリンエンジンで、ディーゼルエンジンと同じ圧縮着火を実現するには至ってませんでした。
ですが、火花着火を利用しながら圧縮着火を促す火花点火制御圧縮着火(SPCCI)というマツダの技術を採用したガソリンエンジンがSKYACTIV-Xです。
火花点火制御圧縮着火は、スパークプラグで混合気に着火はするが、その燃焼が燃え広がるまで待つのではなく、燃え広がる火炎伝搬による高温高圧によって、燃焼室内の混合気を圧縮着火します。簡単に言えば、圧縮着火させるきっかけを、スパークプラグによる火花着火にさせる。

これを利用することで、圧縮比16を実現するとともに、通常のガソリンエンジンで理想的とされるガソリンと空気の混合比、いわゆる理論空燃比の14.7の約2倍も空気量の多い空燃比30も実現することができる。
圧縮比が高くなることと、空燃比を大きくし、燃料に対する空気量を約2倍とするという二つの効果で、燃費をさらに改善しようとしているようです。

ガソリンによって発生する熱の量は同じでも、空気には熱を吸収する効果があり、燃焼温度を従来に比べ低く抑えることができます。燃焼温度が下がれば、エンジン本体へ逃げていく熱が減るので、冷却による損失が減る。
そもそも、ガソリンを燃やすことで高温を生み出しておきながら、冷却水を使って冷やすという無駄のあることをしており、エンジンのさまざまな損失のうち、冷却損失がもっとも大きな損失とされる。この損失を減らすことで、効率も上がり、燃費は改善されということです。

ある検証された数値では、燃費は10%程度向上し、加速性能や乗り心地も同型のスカイアクティブGやD型と比べて、全然別の車種というぐらいであったようです。

価格差が67万もある現状をどう捉えるかはユーザー次第ですが、今後の主力エンジンとして、十分なパフォーマンスを見せている現状に、さらに量産体制と価格見直しが入ることで今後のマツダ車にさらなる期待が集まるのではないかと思います。

参考:<Response.20th>
https://response.jp/article/2017/10/11/300894.html