肥満の経済学

40~74歳が受ける特定健康診査(メタボ健診)や、生活習慣の改善を図る特定保健指導の効果は、1年後に肥満がわずかに改善する程度で、心臓や血管の病気のリスクは低減しない――

京都大学によるこのような研究結果が米医師会に報告されている。
引用:日経新聞朝刊 メタボ健診・指導効果薄い? 肥満改善わずかの解析結果

過去の健診データから、よく似通った結果群のうち、保険指導の対象になった人と、ならなかった人の肥満度改善効果を比較した。
1年後の指標は多少改善した程度、3年後には有意な差は見られなくなったとのこと。

この報告では生活習慣病予防のため数百億円が投入される制度のため見直しが必要という提案となっている。
少子高齢化のトレンドが継続し、健康保険などの社会保障費が増加していく中で、将来の医療費抑制の取り組みは非常に重要な経済政策と言える。

日本国外ではどうか。
参考:時事通信社 英国、肥満対策計画を発表へ コロナ感染の首相の経験踏まえ
英国ではジョンソン首相がコロナウイルスに感染した経験を踏まえ、ジャンクフード禁止やサイクリングロードの整備などの政策を推進しようとしている。
保守党の首相ながら、「国民保健サービス(NHS)への負担軽減のため簡単なことから実践するよう呼び掛けていく」と、福祉を重視する政策への転換と話題になった。

─ YODOQの見方───────────────────────────

仮に全体的な肥満がある程度解消したとして、どれくらいの経済効果があると考えられるのかを調べてみました。
調べてみると様々なレポートが見つかりますが、一例として「大崎スタディ」を挙げてみます。

参考:東北大学大学院 肥満と医療費との関連 大崎Study

この中では対象の人のBMIと実際にかかった医療費の統計から相関関係を調べています。
医療費が最も低いのはBMIが21-23のグループで、過体重群と肥満群はそれぞれ9.8%、22.3%の余計な医療費がかかっていました。

また、より低い体重のほうが医療費が安いかというとそうではなく、グラフ上は痩せ過ぎの人も医療費が嵩む、「U字型」となっているようです。
このように肥満は健康的ではないだけでなく、経済的な面からもマイナスとなる傾向にあるため、当たり前ではありますが普段から食生活に気をつけて適度な運動を行うことが肝要と考えます。
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■備考
他にも肥満と医療費についての調査が多数挙げられています。

参考:厚生労働統計協会 肥満および体重変化が10年後の終末期を除く医療費に及ぼす影響
参考:日本肥満学会 医療経済と肥満治療