LINEの情報管理、安保上の懸念も 国際分業に潜むリスク

無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報が中国の委託先で閲覧可能だった問題は、プライバシーだけでなく、国家安全保障上の懸念もはらむ。中国などは国家による民間情報へのアクセスが欧米諸国よりも容易なためだ。一方、人工知能(AI)関連の技術開発で既に日本をしのぐ中国へのシステム開発や管理の委託は、もはや不可避となっており、多くの国内企業にとって対岸の火事ではない。
日本の個人情報保護法では現在、海外の委託先に個人情報を提供する場合には、
1.委託元が本人同意をとる
2.委託先が利用目的の制限や安全管理措置などを継続的に講じることを委託元との契約などで担保する
のどちらかの方法を採る必要がある。
LINEによるデータ扱いが同法違反だったかどうかの判断は、データ提供の実態を含めて今後の調査結果を待つ必要がある。
ただ個人情報の取り扱いは、プライバシーの問題にとどまらない。安全保障とも密接にからむ。国境を越えたデータ流通では特にその傾向が強い。
LINEの委託先の中国では2017年、民間企業に対し国家の情報収集への協力を求める「国家情報法」が施行された。
憲法学者の山本龍彦・慶応義塾大学教授は「中国に批判的な政治家や評論家の思想、性格、私生活について、中国政府は詳細に把握することができる。日本人の集合的な心理状況や動向をビッグデータから推論し、日本において効果的なプロパガンダを打つことも可能」とみる。

引用:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH177CP017032021000000/?unlock=1

─ YODOQの見方───────────────────────────

LINEは国内ユーザー数8,600万人(2020年10月発表時点)を誇り、政府や地方自治体等が公共サービスをLINEアプリで利用できるシステムを整え、運用している大手IT企業です。そのLINEが個人情報管理の在り方を問われています。今回、課題として提示されたのは下記3点です。

・中国での個人情報にアクセスする業務の実施
・トーク上の画像・動画等の国外での保管
・プライバシーポリシーでデータ移転先の国名が明記されていなかったこと

この問題は大きく報道され、それを受けて政府や地方自治体はLINEを利用したサービスを一時停止するなどの対応を行っています。政府や行政機関が最も心配しているのは、委託先企業が中国にある点です。

中国の「国家情報保護法」では、「いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。」となっており、中国の国民は、国家の情報活動に協力する義務とあわせて、協力したこと自体を秘密にするよう規定されています。

そういった法律に縛られる中国のエンジニアが例え職務上必要なことだったとしても、個人情報にアクセスしていたことが問題視されています。政府の個人情報保護委員会はLINEと親会社であるZホールディングスに個人情報保護法に基づいて報告を求めましたが、3月23日までに提出された資料だけでは不十分として引き続き必要な資料の提出を求めると共に中国からの個人情報へのアクセスが実際に遮断されているかの検証も進めています。

2017年の改正個人情報保護法のポイントの一つにグローバル化に対応する項目が定められています。(改正法第24条)
外国にある第三者に個人データを提供する場合は次の項目を満たす必要があります。

1.外国にある第三者に提供することについて、本人の同意を得る
2.外国にある第三者が、適切な体制を整備している
3.外国にある第三者が、個人情報程委員会が認めた国に所在している
 (個人情報保護委員会が認めた国とはEU)

個人情報保護法は3年ごとの見直しを実施することになっており、現行法は2015年に公布されたもので2017年5月30日から全面施行されたものであり、Pマークの審査基準となっているJIS Q 15001:2017は、2015年(平成27年)の個人情報保護法改正に対応しています。
また、3年目にあたる2020年に見なおしが実施された内容は、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」として6月12日に公布され、令和4年4月1日が施行期日です。
このように、3年ごとの見直しが実施されるのは、情報技術発展のスピードが非常に早く変化が大きい時代を考慮し現状に即した法律として運用するためで、それだけ重要視されていることが伺えます。
今回のLINEの報道に触れ、個人情報を取得する企業として個人情報の取扱いには十分な配慮が必要であり、それが社会的信用に繋がるのだと改めて感じました。
また、個人情報保護を強化しようという動きもあることから、今後ますます企業は個人情報の取扱いには注意を払う必要があります。

参考:https://www.fuhyo-bengoshicafe.com/bengoshicafe-18661.html