コカ・コーラ社の改革とダブルループ学習

全国のスーパーの棚で2021年3月29日を境に、ある“異変”が起きる。見慣れた「コカ・コーラ」500ミリリットルのペットボトルがほぼ消え、350ミリリットルと700ミリリットルの2ラインが中心となる。なぜ売れ筋商品を大幅刷新するのか。その背景には客のニーズの変化を敏感に捉え、「当たり前」を疑った日本コカ・コーラの深謀遠慮があった。

引用:日経XTREND『【特報】コーラ500ミリがスーパーから消える 25年ぶり大改革 』
2021年3月25日付

─ YODOQの見方───────────────────────────

ここ数年、500mlペットボトルに次いで、520ml、550ml、600mlといったやや大きめの商品が増えていることに皆さんは気づいているだろうか。
マーケティング目線での理由は、単純に、容量を多くすることによってより売れるから、である。
競合商品が多い飲料業界において、パッケージデザインや容器の形を変えることと同様に、容量を多くすることでお得感を生み、消費者に買ってもらう狙いがある。
飲料は原価が安く、広告宣伝費がコストの多くを占めていると言われている。
ペットボトルの容器を変更し、あるいは容器のぎりぎりまで飲料を詰め、数十ml増量するコストと、それによって生まれる販売数の増加を天秤にかけると後者の方が大きいのだろう。
あるいは、競合商品が増量することで、自社商品も増量せざるを得なくなっているのだろうと思われる。
ここ数年の動きを見て、消費者のニーズは、より大容量の商品に向いているように思えた。

今回、コカ・コーラ社は思い切って500mlをなくすという選択をとった。
コンビニとスーパーでの消費の違いなどは、マーケティング初心者でも思いつきそうな違いではあるが、「500mlは本当に必要か?」と、今までの常識を疑い、愚直に調査し、調査結果を活かして消費者のニーズに答えた。
THEマーケティング、という感じで素直にすごいな、と感じた。

ダブルループ学習、という言葉がある。
とある組織が、今回のコカ・コーラ社のように、既存の考え方や前提を覆し、新しい考え方や行動を取り込むことである。
逆の意味にシングルループ学習があり、これはいわゆるPDCAを繰り返し、過去の経験や体験から問題解決を図り成長していくことだ。
もちろんシングルループ学習も重要であるが、シングルループ学習は、ある一定ラインに到達すると壁にぶつかりやすいと言われている。
コカ・コーラ社は長寿企業だからこそ、よくある取り組みだけでは販売数の増加は難しかっただろう。

仕事でも同じことが言える。
目先の仕事の対応ももちろん大事だが、今目の前の作業をどう早く片付けるか、ということよりも、この作業はなぜ必要か、どこまで理解が必要か、といった前提を少しでも考えることで、将来的に見ればさらに成長できるのではないか、と感じた。