5割安、合成ダイヤ身近に 環境配慮で若者つかむ

炭素から人工的に作る「合成ダイヤモンド」が宝飾用として国内で広がり始めた。天然ダイヤと比べて価格が5~7割安く、加工技術の向上で輝きなどの品質も高まった。環境に配慮して生産する点が若年層に支持されている。米大手の日本進出など扱う店舗も増え、ファッションとして身近な存在になりつつある。
天然ダイヤは地球の深部で数十億年間、高温高圧の環境下で炭素が結晶化してできる。一方で合成ダイヤは工場内で地球深部を再現して作る工業製品だ。天然と比べて物質的な違いはない。価格は重さや輝きなどの等級によって異なるが5~7割安い。
世界300店を展開する合成ダイヤ大手の米スマイリングロックスは月内にも、日本向けの通販サイトを開設する。指輪やネックレスなど500点以上の商品を扱う。指輪の周りに計0.75カラットの合成ダイヤをあしらったエタニティーバンドは約11万円と20~30代の女性でも買いやすくする。実店舗では国内の宝飾店数店での導入が決まったほか、7月には大手百貨店で期間限定の売り場も設ける。今後はSNS(交流サイト)での動画配信や駅での電子看板などで認知度向上を図る。
ズールー・ゲブリヤ最高経営責任者(CEO)は「若年層の間で環境への意識が高まっており、日本は米国や中国に次ぐ合成ダイヤの市場になる」と話す。一般的なダイヤモンドの生産は森林を伐採して採掘し、大量の水で不純物を洗い流すなど環境面が課題だった。合成ダイヤは価格や品質だけでなく、環境に優しい特徴を打ち出し、エシカルを優先する若年層の消費行動に訴える

引用:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ25ACR0V20C21A2000000/

─ YODOQの見方───────────────────────────

ダイヤモンドをはじめ宝石と呼ばれる石は、古くから権力や富の象徴として、また見た目の美しさから珍重されてきました。そのため、合成品や模造品も作られました。構造上の違いで大まかに分けると

・天然石:地球で育まれた天然の石
・合成石:人為的に作られ、天然石と比べても化学的・物質的・光学的性質にほとんど違いがない石
・人造石:天然石と同一成分ではなく、見かけだけを似せた石

ただ、天然石であっても加熱処理などの人工的な加工をすることで、色相や明度、色の濃さなどを変えたり、色ムラを無くし価値を上げている場合もあります。加熱処理をしていない製品を区別するために「ノーヒート」と明記され、販売されることもあります。
宝石の中でも最上とされるダイヤモンドの価値は4Cと呼ばれる品質を評価する厳密な基準があり、専門家が鑑定しています。それぞれの基準のグレードが上がると希少性が高くなるため高価になります。価値基準の各要素の頭文字が「C」で始まる単語なので、4 Cと言われています。

・カラット:重さを表す単位で、1カラットは0.2グラム
・クラリティ:透明度を表し、傷・欠け・内包物(インクルージョン)の大きさ・場所・性質で価値が決まる
・カラー:色 無色透明に近い程、希少価値が高い 一定の色味を超えるとファンシーカラーとして評価される
・カット:形状・プロポーションやフィニッシュ(仕上げ)のことで、ダイヤモンドに注がれた光が光学的に最も効率よく反射させる形として考え出された58面体のラウンドブリリアンカットの基準
ダイヤモンドの輝きや煌めきを存分に発揮するための重要な要素で、他の3つが原石に依存する要素に対し、カットは職人の技術力に左右されます。

上記の4項目について複数の鑑定士によって鑑定された結果に基づいて発行されるのが鑑定書で、他の宝石には無いダイヤモンド固有のものです。他の宝石に発行されるのは鑑別書で、化学的検査を行った上で鉱物名や宝石としての種類などが記載されたものです。

ダイヤモンドの採掘には、様々な問題点が挙げられています。
1、環境への影響
ダイヤモンドの採掘方法にはいくつかあり、大規模な機材を必要とするパイプ鉱床や漂砂鉱床は企業が採掘現場を管理していて、近年では環境マネジメントシステムに関する国際基準であるISO14001を取得していたりしますが、ISO規格には環境パフォーマンスの評価に対する具体的な取り決めはありません。また、現地の住民が川床の砂利を掘って洗い流すことで原石を探す方法では、環境に配慮しない無理な採掘が行われるケースもあります。

2、人権の問題
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、およそ4000万人が手掘りの小規模鉱山で働き、その内の100万人が子供だと言われています。鉱山では、強制労働や危険な作業による死者の発生、水や食料の不足や不衛生な環境での労働などの人権侵害も挙げられています。

3、紛争ダイヤモンド
反政府軍が武器を調達するための資金源とするために取引し、売買されるダイヤモンドのことで、武力を用いて地元住民を強制的に働かせて採掘した原石を輸出しています。この取引で生まれる資金で、紛争が長期化するという問題が発生しています。

天然ダイヤモンドにまつわる上記の問題は人造ダイヤモンドではクリアできるため、エシカル(倫理観)を優先する消費者への訴求効果があります。ただ、技術が発達すると天然石と人造石の区別が難しくなるので、流通経路の透明性を保たなければ消費者が不利益を被る恐れも考えられます。

参考:https://diamondsforpeace.org/environmental-destruction/
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB130K9013042021000000/?unlock=1