日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃 佐川急便が配送用軽バンを7200台総取っ替えへ

4月、佐川急便の発表が自動車業界に激震を与えた――。
同社は保有するすべての配送用軽自動車(7200台)を、EV(電気自動車)に入れ替える方針を示した。多くの業界関係者が驚いたのが、そのEVをベンチャー企業が設計し、中国の五菱汽車が製造を受託するという点だ。ベンチャー企業の正体は、2020年6月に設立されたASF(東京都港区)。佐川急便が環境負荷の低減や燃料費も含めた総コストの削減、車両のカスタムによる配送業務効率化を図るため、車両の共同開発先に選定した。
航続距離は200キロメートル以上で、軽タイプの配送車が1日に走行する距離を十分まかなえるという。また、配送車の状況をデジタルで管理できるような端末を標準搭載する予定だ。
現状、EVはバッテリーの価格が高く、ガソリン車に比べて製造コストが倍近くかかることも珍しくない。ただ、EVメーカーや部品産業が集積する中国で既存メーカーに製造を委託したことで、この車体の1台当たりの製造コストは100万円弱と見られ、EVとしては優等生といえる。

引用:東洋経済オンライン 2021/05/17

また、このEVのカスタムは、佐川急便のドライバー約7200人に取ったアンケート結果などを反映している。例えば、商用車では使用することが少ない助手席の幅を短くして運転席の幅を拡張。ペットボトルホルダーはドライバーが飲むことが多いという1リットルの紙パック飲料が置けるよう、大きめに設計されている。
ASFという会社は、電気自動車の普及・促進を目的に、ファブレスメーカーとして設立されました。将来バッテリーを活用した持続可能な社会創りを見据えビジネスを展開します。また地球環境に配慮した事業として「持続可能な開発目標(SDGs )」や 気候変動に関する国際的枠組みである「パリ協定」など世界の共通目標を踏まえ、脱炭素社会の実現を目指しています。

引用:株式会社ASF

─ YODOQの見方───────────────────────────

この記事から次のような感想を持ちました。

・日本で車を買うといえば、自動車メーカーというのが常識でした。世界的な傾向としても自動車産業というのは寡占状態であることがほとんどで、その既成概念をくずしてベンチャーと一緒に作ったというのは画期的なことだと思います。日本車といえばトヨタ、日産、ホンダという時代は、やがては過去のものになるのかもしれません。
EVのメーカーでは、世界的にもこの傾向は起こり始めており、2020年のEV(PHV含む)世界販売トップ20社の中には中国の新興メーカーが多くエントリーしています。

・7200台で受注したというところから、多品種少量の生産が可能になってくるのではないでしょうか。いずれは車もオーダーで作れる時代がやってくるのかも知れません。

・低価格を実現しました。これは低価格なEV生産に長けた中国で作ったためでしょうが、テスラのもっとも安い車種の434万円と比較すれば日本が企画した製品としては優秀だと思います。

・SDGsや脱炭素といった大きなテーマだけではなく、使い勝手に考慮したことは素晴らしいと思います。ドライバーが好む1リットルの紙パック飲料が置けるようにした、なんていい話ですよね。物作りの基本を大事にしているのではないでしょうか。

・ただ1点惜しい!と思ったのは「日本の物作りの粋を集めて、国内で100万円の車を作ってほしかった」ということです。
工場を海外に移転することによる製造業の空洞化はかなり昔から言われており、日本の産業構造の大きな問題です。また、特に最近はコロナの影響で材料の調達が乱れ、サプライチェーンの見直しは世界中の課題です。
かなり困難だとは思いますが、ここまで破天荒なことをやってくれたのです。ぜひ実現してほしいものです。