「現実的に実行しやすい健康改善プラン」を提案するAIを開発

健康診断結果を元に最適な健康改善プランを提案するAIが開発されました。京都大学大学院医学研究科の研究グループが開発したAIは機械学習と統計モデルの階層ベイズモデリングを組み合わせたもので、提案される健康改善プランは「実行しやすさ」にこだわったプランです。

医療業界では「個別化医療」が注目されています。個別化医療は個人の健康特性などに基づいた受け入れやすいプランの提案が重要ですが、これまでのプランの提案は臨床医の経験に依存するものでした。しかし実際のデータ分布パターンを学習させたAIを使うことで、各個人の健康状態に応じた実行しやすい健康改善プランの提案が可能となります。

研究グループは「個別化医療の重要性が高まっており、蓄積された健康データから有用な知見を得ることが期待されている。今回の研究はそれに対する全く新しいアプローチを提案するもので、今後の医療分野でのデータ活用の加速に大きく貢献する」としている。

─ YODOQの見方───────────────────────────

個別化医療とは同じ病気と診断された患者に対して同じ治療を行うのではなく、遺伝子や体質に合わせて治療を行うことです。同じ病気、同じ治療方法でも患者によって副作用や治療の効果の現れ方に個人差がありました。近年の研究で個人差が現れた原因に患者の遺伝子が関わっていることが分かってきました。同じ病気と診断されても遺伝子やタンパク質が異なっていることもわかっており、遺伝子などの情報を元に治療を進めることで、より治療の効果が期待でき、副作用も少なくすることができるのではないかと考えられています。

しかし、個別化医療の普及には様々な課題があります。これまでの医療とは異なる検査や治療となるため、保険適応の範囲が限られたり、遺伝子に対応した治療薬がないこと、実施できる施設や人材が不足していることなどが課題として挙げられます。その課題の解消に向けてAIを使ったゲノム情報解析システムの開発が進められています。ゲノム情報解析システムでは多数の抗原候補の中から治療対象となる抗原を特定します。特定された情報を元にワクチンなどを合成することで患者に合わせた治療を進めることができます。

品質や精度を担保するための検査基準の策定や、解析結果の解釈方法、個人情報となる検査結果の取り扱いなど検討が必要なものがあるため、個別化医療の普及にはまだまだ時間はかかりますが、検討事項を進めることが今できることではないでしょうか。