世界初、エルサルバドルでビットコインが法定通貨に

中米エルサルバドルの国会は8日、代表的な仮想通貨のビットコインを法定通貨として採用する法案を賛成多数で可決した。ビットコインが法定通貨として採用されるのは世界で初めて。90日後に法制化され、企業の商品やサービスへの支払い、納税に利用できるようになる。
米ドルも法定通貨として存続する。政府はエルサルバドル開発銀行に設けた信託を通じてビットコイン取引時のドルとの兌換(だかん)性を保障する。ビットコインとドルの為替レートは金融市場で決まるとした。
ビットコインは送金が容易なのが特徴。一方で、エルサルバドルでは国民の約7割が銀行口座を持っていない。治安の悪化や貧困が原因で米国への移民を目指す人が多く、ブケレ大統領は「海外に住む国民が自国に送金する際にビットコインが役立つ」と強調した。
世界銀行によると、同国の外国からの送金額は国内総生産(GDP)の約2割を占める。法制化により全ての事業者はビットコインでの支払いを受け入れる必要がある。個人の使用は任意とされ、ブケレ氏は「利用者にリスクをもたらすことはない」と説明した。

─ YODOQの見方───────────────────────────

・自国通貨(コロン)を破棄して米ドルを法定通貨にした背景
・ビットコインを法定通貨にすることで考えられるデメリット

米ドルが法定通貨となった経緯
1.エルサルバドルは1980年から1992年まで深刻な内戦に陥っていました。
当時のエルサルバドルでは、ニカラグアでのサンディニスタ革命(1979年)に刺激された反政府運動が激しさを増し、米軍の支援を受けた政府軍とゲリラ勢力との間で武力衝突が生じていた。
国連の仲介によって和平が実現した後、1994年には選挙が行われ、ようやくネイションビルディングが開始されることになったという経緯があります。
その内戦の過程で不安定であった自国通貨のコロンを破棄し米ドルを法定通貨にし、為替レートを消滅したことで物価と通貨が安定しました。
実際、内戦を経験した国では米ドルなど信用力の高い外貨を現金で所持していることが多いです。
エルサルバドルも同様で、米ドルに対して信用力を求めた結果、米ドルが法定通貨となりました。米ドルの安定性とは反対に法定通貨として新たに追加されたビットコインは投機マネーを引き寄せ、価格は乱高下を繰り返します。そうした性格を持つビットコインに対し、内戦を経験した世代ほど米ドルへの信仰は根強く、物価の安定としての観点から嫌気される可能性は高いのではないかと思います。

ビットコインを法定通貨にすることで考えられるデメリット
2.犯罪性の強い経済取引に用いられるリスク
治安が悪く犯罪率が高い国です。麻薬取引など違法な経済活動も横行していています。そのような闇取引にとって匿名性の高い暗号資産での取引はうってつけな手段といえます。
米ドルでの取引では送金業者や金融機関を必ず経由することになりますが、ビットコインは取引の追跡を困難にする技術が次々と開発されているので匿名性が高くなり犯罪が増すと考えられます。

参考:https://president.jp/articles/-/46883?page=1

過去に通貨の安定を求めたがゆえに自国通貨を破棄したにもかかわらず、今回とても変動性の高いビットコインを法定通貨として追加しました。
正直矛盾していると感じましたが、使い方は個人に委ねるということなので、これからどれくらいの割合の国民が実際にビットコインを日頃から使用するのかが気になるところではありますし、国の経済状況を考えるとビットコインを法定通貨とする選択肢も理解できました。しかし、先ほどあげたデメリットをどのようにカバーしていくかが、これからの見所かなと感じました。それと同時に、この決断の結果次第では他の国でもビットコインが法定通貨になりうる可能性もあるのではないかと思いました。