チキンテックは金の卵か、NECやソフトバンクが参入

第一次産業の中でもITの活用が遅れていた養鶏業に、NECとソフトバンクグループが相次ぎ参入した。AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)を駆使して養鶏を支援する「チキンテック」の新たな市場創出に挑む。

両社が相次ぎ「チキンテック」に参入した背景には、健康志向などで鶏の需要が高まる一方、養鶏業の人手不足が深刻化していることがある。
人手不足の問題を解消するには、1人当たりの生産性を高める視点に加え、養鶏業の労働環境を改善し、新しい人に入ってきてもらえるようにする必要がある。IT企業による「チキンテック」への参入が相次ぐ背景には、ITが養鶏の労働環境を改善する切り札になり得るとの期待がある。

参考:チキンテックは金の卵か、NECやソフトバンクが参入

─ YODOQの見方───────────────────────────

本記事の製品は生産者の能率向上を目的としているものだが、IoT製品の中には、能率向上と共に鶏の生育環境改善につながるものもある。

「My Connected Coop」は、鶏小屋のケージをボタン一つで開閉できるIoT製品だ。朝になればケージをあけ、夜になればケージを閉めるといった具合で、人の手を介することなくケージの開閉をコントロールできる。一日中、鶏を狭いケージに入れておくのではなく日中は外の空間で生育すること方式である。ケージを開けた際に、鶏をケージから外に出すことや、ケージを閉める際に、鶏をケージの中に入れるにはどうすればよいか等、まだまだ工夫が必要な製品ではあるが、生産者の作業の削減に繋がるのではないだろうか。

ではなぜ、鶏の生育環境を改善する必要があるのであろうか。生育環境を改善することは良いことだが、生産性が落ちるという現実も存在する。そこには、生産性ばかりを重視できない理由がある。

「アニマルウェルフェア」という言葉をお聞きされたことが有るだろうか。国際獣疫事務局(OIE)の勧告において、「動物がその生活している環境にうまく対応している態様をいう。」と定義されるものだ。日本も、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めている。しかし、残念なことに日本の養鶏業はアニマルウェルフェアに順守したものとは言えない様だ。

日本の採卵養鶏の現場では、「バタリーケージ」という囲いの中で鶏を飼育する方式が9割以上も採用されている。そのケージは、満員電車並みの狭さであり厳しい環境で鶏は生育されている。

今年の8月、米国、カナダ、ニュージーランドなど計10名のオリンピック選手が、日本の養鶏業に抗議の声を唱えた。2020年の東京オリンピック、パラリンピック競技大会で使用する豚肉と鶏卵について、豚肉は100%ストールフリー(妊娠豚の拘束飼育をしないこと)で、鶏卵は100%ケージフリー(平飼い、放し飼い)で調達するように東京都知事、東京オリンピック、パラリンピック競技大会組織委員会へ嘆願する声明を発表した。

過去のオリンピックを例にとってみると、ロンドン大会では放牧の卵が使われ、リオ大会ではケージフリー卵が使われている。そのため、東京オリンピックはレベルダウンとみられている状況である。

日本のアニマルウェルフェアの基準に対する、国際的な目線を、少しでも向上させるためにIoT製品の更なる発展が期待される。

参考:
ニワトリ小屋にも押し寄せるIoT化の波
アニマルウェルフェアについて
バタリーケージ:日本の状況を知ろう
オリンピックメダリストら9名が声明を発表。東京五輪の使用食材のアニマルウェルフェア求める