▼積水ハウス55億円詐欺被害

東京都品川区の土地を購入しようとした積水ハウスが偽の地主にだまされて約55億円の詐欺被害に遭った事件で、警視庁捜査2課は16日、偽の書類を法務局に提出して土地の所有権を無断で移転登記しようとしたとして、土地所有者の女性になりすました職業不詳の羽毛田正美容疑者(63)=東京都足立区=ら数人を偽造有印私文書行使などの疑いで逮捕した。
土地は、品川区西五反田にある約2千平方メートルの旅館跡地。積水ハウスはマンション建設用地を取得するため2017年4月、仲介業者を介して所有者を名乗る女から土地を買い取る契約を締結。同年6月にかけて計63億円を支払った。
しかし土地の所有権移転登記をしようとしたところ、所有者側の提出書類が偽造と判明。登記申請は法務局に却下され、所有者を名乗る女とは連絡が取れなくなった。
積水ハウスが、土地の持ち主でもない人物に63億円支払い、登記を変更しようとしたところ、そんな人は土地の持ち主じゃないよと言われ、まんまと金を騙し取られた。という事件です。
そんな土地の売買を専門とする詐欺師を「地面師」と呼ぶそうで、詐欺の中でも高級な詐欺と言われているそうです。

引用:日本経済ニュース 2018/10/16から

─ YODOQの見方───────────────────────────
最初、このニュースを聞いたとき、不謹慎ながら少しわくわくしてしまいました。アナクロチックな手口が、なにか昔の映画でも見ている気がしたのです。
今、これだけ情報化、デジタル化が進み、また危機管理能力、コーポレートガバナンスの重要性が叫ばれている世の中で、何故こんな昔の映画のような事件が簡単に起こってしまったのでしょうか。その理由を少し調べてみました。

1.取引を急いだというのがひとつの理由のようです。
この土地というのが、JR五反田駅から徒歩3分の立地にあり、これまでも業者が「のどから手が出るほど欲しい」とされている土地でした。
本当の土地の所有者が、仮登記後に出張所からの連絡を受けて、驚いて「売買契約をしていないのに仮登記された」との内容証明便を送ってきました。
しかし、積水ハウス側は「取引を妨害したいがための嫌がらせ」と相手にしなかったとのことです。また、契約の際の社内ルールである役員4人の稟議も後回しにされていました。

2.社長が早い段階で物件を視察して購入を決め『社長案件』になったからだ」と社員の指摘もあります。
社長は物件の視察を行っており、社長自身が判子を押した書類が先に回ってしまったため、そのあとの手続き中も、誰も異議を差しはさまなかったようです。

3.慣例上、登記に関する取引では、紙媒体での登記簿謄本、権利書、印鑑証明、印鑑が絶対的なものとされ、それが揃っていれば、ほとんど疑われることがないだろう。という指摘がありました。

4.交渉の場に複数の弁護士を同席させていた。弁護士はそれを詐欺だからとは知らず、積水ハウス側も弁護士がいるのだから大丈夫だろうと、思い込んでしまっていた。

色々取りざたされていますが、これまた非常にアナクロチックな理由が重なってこんな事態にいたったというわけです。

最後にこの事件を通して、僕個人が思ったことを2点述べさせていただきます。
1.現代の情報化、IT化、マニュアル化された社会の危うさ、脆さです。
世間並みにこれだけ揃えたのだから、うちは大丈夫という風潮があるのではないでしょうか。いくら、社内統制が仕組みとして作り上げられていたとしても、今回のように人間臭い部分ですっとばされていては意味がありません。
仕組みが形骸化されてしまってはいないか、どの会社でも今一度、振り返ってみる必要があるのではないでしょうか。

2.登記という部分は、どこか旧態依然とした体質を引きずっているような気がします。
土地登記については、2005年にデータベース化されたそうですが、それまではバインダーで綴じられた書面が全てだったようです。そんな体質が、最終的に紙媒体が信用されてしまうという事態を招いたような気もします。
今までも地面師の暗躍は知らないだけで頻繁にあったようなのですが、今回、このように白日にさらされたことで、何かしらの変化がもたらされるのでは、と思いました。

参考:https://totibaikyaku.com/2018/10/sekisui-riyuu.html
   http://news.livedoor.com/article/detail/15450121/