海運にも物流危機が迫る 内航船について

消える内航船、静かに進む「海の物流危機」 東洋経済オンライン

「内航船」事業者で、事業継続が危ぶまれる事例が増えている。「内航船」とは国内の港間に限定して物資を運搬する船で、鉄鋼や石油製品、セメントなど産業基礎物資輸送の80%を占めている。船員数はバブル期から直近までで半減しているが、輸送量は下げ止まっており、人員不足傾向にあるという。

対策として様々な工夫が検討されているが、なかなか問題の本質的改善には至らない。
・女性採用・・・全体の2%。作業の性質上大幅な増加は難しい
・外国人採用・・・もともと、経済安全保障上の理由から規制がある。日本人船員とのコミュニケーションにも課題がある

独立行政法人海技教育機構による学校教育により、船長候補生の育成は順調にいっているというが、彼らの就職先は大型船を複数保有する大規模な事業者がメインとなっている。
「一杯船主」と呼ばれる中小の事業者は高齢化と採用不足の問題解消目途がたっておらず、小型船は隻数で内航船全体の80%を占めており、廃業が進んだ場合には業界全体での柔軟な物流サービス維持が難しくなる。

─ YODOQの見方───────────────────────────

もし内航船事業が立ち行かなくなった場合、どのような事が考えられるか、海運と内航船の重要性について考察してみました。

北京(大都)、ヴェネツィア、アムステルダムなど歴史的に海運と共に都市が発展する事例は多数ありました。国内でも江戸時代には北回り船などの廻船航路が盛んになり、大坂、門司、敦賀など多くの港が国内海運によって栄えた経緯があります。
現在でも大阪の名産品とされる塩昆布は松前(北海道)から船で運ばれた昆布を大阪で加工することで生まれたそうです。また、江戸時代以前は日本酒の名産地といえば伏見(京都)だったのが、より港に近い場所でつくり、大消費地の江戸に輸送するため灘(神戸~西宮)での酒造りが発展したと言われています。普段はあまり気にすることはないですが、このように我々の生活の身近には海運の発達から繋がっている事例が多数あるようです。

海運が発達してきた背景には陸送の5~10倍とも言われる効率の良さがあります。特に大量の物資を効率的に遠くまで運ぶ場合には威力を発揮し、古くは馬や人力での輸送に対する輸送量と早さ、現在ではトラック運送に対する賃料や環境負荷(二酸化炭素排出量)の優位性があります。
国土交通省ではトラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換する「モーダルシフト」を推進しており、内航船はこの受入先として期待されています。

小規模内航船事業者や小型の内航船数がこのまま減少すると、柔軟な輸送計画が立てにくく「使いづらい」ものになってしまいます。今まで船で運べたモノを、わざわざトラックで運ぶことを考えると、エネルギー・価格の両面でコスト増要因となります。
石油製品や建築資材など「あって当たり前のモノ」を運ぶコストの増加は、製造業にとっては原価増になります。内航船は国内だけの問題のようですが、工業製品を大量に輸出することで外貨を稼ぎ発展してきた日本にとっては見逃せない問題ではないでしょうか。

■参考
船乗りになろう! 日本内航海運組合総連会合

エコシップマーク 海上輸送サービスの特性

江戸時代の海運と五街道

モーダルシフトとは 国土交通省