いつかはステーキ 培養中

手のひら大の容器がびっしりと並ぶ。1つ取り出してのぞき込むと、ピンク色の液体に何かが浮かんでいる。「ウシの細胞を培養した肉です。今は1センチメートル角まで育てるのがやっと。ゆくゆくはステーキ肉の大きさにしたい」。東京大学の竹内昌治教授は「培養ステーキ肉」を2025年ごろまでに実現するという野望を抱く。

もともと果物や植物を食べていたのは今から250万年前、アウストラロピテクスなどの猿人が生息していた時代で、その後、狩りなどで動物を食べるようになり、原人、旧人、新人と進化し動物を家畜として育て食するようになりました。これからは培養肉が当たり前の時代が来ようとしています。

培養肉の課題は育成にかかるコストの問題、食感の問題、味の問題などまだまだ解決すべきことは多いが、概ね期待の方が高いと言える。その背景として、世界人口の急激な増加により食料不足の問題が深刻化していくことが目に見えていることがあげられる。世界の食肉市場が年率3%で成長を続けていることを考えると培養肉の開発は急務と言えるかもしれません。

また試算では、1Kgの肉を育てるのにかかるエサとしての植物は鶏肉で3kg、豚肉で7Kg、牛肉で11Kgを必要とします。さらに1Kgの肉を育てるのにかかる水は鶏肉で4.5t、豚肉は6t、牛肉は20tを必要としています。これらの資源の問題にも絡むことから培養肉への期待度が高いことが伺えます。

なんとこの培養肉が誰でも培養できるようになるようです。発泡スチロールの容器と簡単な機器を使って市販のスポーツドリンクを培養液の代わりにして肉を培養できるようになるということで驚きです。

生きた動物に頼る畜産業から細胞培養への大転換は、食材を細胞から生産する「細胞農業」という新語を生んでいる。その語感が伝えるのは「食べたいだけの肉を作ればいい」。わずかな肉を得るのに、家畜を1頭丸ごと育ててきた私たち人類に新鮮な驚きをもたらす。

引用:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO48267780W9A800C1TL1000/

─ YODOQの見方───────────────────────────

様々な方面で注目される培養肉ですが、どのような分野に貢献できる可能性を持っているのか、また問題や危険性としてはどのようなことが考えられるのかを調べました。

1、地球温暖化を抑制できる可能性
家畜を殖やすために植物性の飼料を育てることにかかるCO2や家畜が吐き出すCO2やメタンガスが世界の温室効果ガス排出の18%にのぼるというデータがあり、培養肉にとってかわることで大幅に抑制できるといいます。

2、森林破壊を抑制できる可能性
南米やオーストラリアでは放牧のための牧草地の開発により、森林の伐採が行われ大規模な森林破壊が起こっています。それにより全世界で100万種もの生物が絶滅の危機に直面しているといいます。森林破壊は温暖化の原因にもなるため、培養肉の栽培ではそれらが大幅に減らせることが期待されています。

3、水資源の枯渇
上記にも記載しましたが、家畜を育てるためには多くの穀物が必要となり、その穀物を育てるためには多くの水を必要とします。エサとなる穀物を輸入し、肉を食することが結果的に生産国の水資源を輸入し消費していることにつながっています。消費国で培養した肉を食べることで、水資源の問題を解決する可能性が高まることに期待が集まっています。

4、食料危機への対策
上記にも記載しましたが世界の人口は増え続けています。2011年に70億人を超えた世界の人口は2050年には96億人へと増加する見込みです。その人口をまかなうためには、世界の食糧生産を約6割も増加させなければならないといわれています。しかし、農地をこれ以上増やす余地はほとんどありません。このため培養肉に期待が集まることは必然となります。

5、動物愛護の観点
食べるためとはいえ人類は長い間、動物を酷く扱ってきました。動物を殺さなくても生存できる手段が確立されれば、そちらの方がより理にかなっていると言えます。そのため培養肉への期待が高まるのも必然といえます。

6、ベジタリアンなどの食思想の観点
培養肉は一部のベジタリアンからも支持されています。哲学的・倫理学的・生物学的に非常に重要な命題ですが、より多くの人々から評価されることは培養肉が世の中に浸透していくことを後押しするに違いありません。

危険性としては、培養される肉は通常の肉と同じくらい安全なはずだと考えられていますが、ヒトへの影響がわかるまでには何年もかかります。さらにDNAに及ぼす影響としては100年ほどの経過がないとわからないとも言え、遺伝子組み換え食品と同じ危険性をはらんでいるのではとの警笛もあります。