なぜアメリカでは警官による暴行が無くならないか

米南部ジョージア州アトランタ市で6月12日夜、黒人男性が警官ともみ合いになった末に、撃たれて死亡する事件があった。市長は13日、事件を非難し、市警の本部長は辞任。黒人への暴力に対する抗議デモが全米で続く中での事件で、警察に対する批判の声が一層高まりそうだ。

引用:米でまた黒人男性死亡 ドライブスルーで警官に撃たれる

─ YODOQの見方───────────────────────────

 黒人男性が捜査中の警官から暴力を受け、時には死に至るという事件が繰り返し発生しています。以前から同様の事件があり、5月には大規模デモが発生する中でなぜこういった事件が起こるのか背景を調べてみました。

アメリカの警察の歴史的問題 逃亡奴隷の追跡から始まり(BBCニュース)
上記番組にあるように、現代の黒人男性の死因の6位は警察による実力行使という調査結果があります。我々の想像以上にこういったケースは発生しているようです。
奴隷制の時代、警官は逃亡した奴隷を捕まえる役割を負っていました。

また、奴隷解放宣言後の刑務所では囚人を強制労働させたり、貸し出してプランテーションやインフラ建築の安価な労働力として、莫大な収益をあげたという歴史があります。「名前を変えた奴隷制」は第二次世界大戦まで続いたと言われています。
奴隷制とよばれない奴隷制 黒人再奴隷化の歴史(Democracy Now!)

現在でもアメリカ各州には民営刑務所があります。元を辿れば産業の少ない、財政の苦しい地域に新たな雇用と財源をもたらすように設立されてきました。
民営刑務所では収容者数が直接の売上につながり、監視や医療サービスはコスト要因となります。なるべく多くの犯罪者を捕まえ、コストをかけずに長期にわたって収容するインセンティブが働きます。
営利目的の刑務所運営に対する批判も多く、連邦としては民営刑務所は廃止されましたが、コアシビック社は証券取引所に上場しており、トランプ大統領誕生時には、移民収容施設拡大の期待から株価が急騰しています。
『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』訳者あとがき(Webミステリーズ!)

アメリカという国が、規制よりも自由市場を優先することで、経済的繁栄を手に入れていることは誰も異論がないと思います。しかしこれらの例を見るとそのやり方に問題を抱えているという面も見えてきます。
日本では新しい制度を導入する際に、「欧米の先例に倣って」ということがよくありますが、悪い面も含めてよく理解したうえでの判断が必要となりそうです。