みずほ銀行、紙の通帳に手数料 印鑑・書類も削減へ

みずほ銀行は8月21日、2021年から紙の預金通帳を発行する際に税込1100円の手数料を取ると発表しました。
通帳を紙からデジタルに切り替えるよう顧客に促します。手続きでは印鑑を不要にしたり書類を減らしたりといった取り組みと合わせ、コスト削減と利便性の向上につなげるのが目的です。
みずほ銀行が手数料を取るのは、21年1月18日以降に普通預金や定期預金の口座を開設する人などが対象で、通帳の余白がなくなり追加で発行する場合も手数料を取ります。既に開設している口座の紙の通帳が記帳で埋まった場合や新規の開設でも70歳以上の顧客は対象外となります。紙の代りのデジタルの通帳はパソコンやスマートフォンで最大10年分の明細を表示させることができます。
紙の通帳は紙代や人件費などのコストに加え、1口座あたり年200円の印紙税がかかっています。みずほ銀行のようなメガバンクは紙の通帳発行に掛かる人件費や印紙税などで年間数十億円の経費を負担しています。みずほ銀行の口座開設は年間80万件弱ありますが、通帳発行の手数料を取ることで新規発行は7割程度減ると考えられています。また、紙の通帳は銀行ごとに印字方法が違うため、他行とATM(現金自動出入機)を共通化する際の障壁にもなります。
他にも今年10月から住所変更や税公金の支払いなど8種類の店頭取引を印鑑なしで済むようにするとも発表しています。これまでは来店客が窓口で伝えた取引の内容を銀行員が業務用の端末に打ち直す必要がありましたが、今後は伝票を減らし、店頭のタブレットに来店客が入力するだけで手続きが終わるようにし、通帳、印鑑、書類が不要な「3つのレス」を進めます。

引用:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62921170R20C20A8EA4000/

─ YODOQの見方───────────────────────────

銀行は預金者から集めた資金を運用することで利益を出しますが、低金利が長期化して経営環境が苦しいため、店舗の削減で業務の効率化を図っています。デジタル化もコスト削減と効率化の有効な手段として各銀行で導入されています。

・三菱UFJ銀行
 2020年1月24日から3月15日までの期間限定で「総額1億円プレゼントキャンペーン」を開催し、紙の通帳からデジタル通帳「Eco(エコ)通帳」に切り替えた普通口座の利用者の中から先着で10万人を対象に1000円を贈ることでデジタル通帳への移行を促進しました。

・三井住友銀行
 2020年6月17日からデジタル通帳に切り替えた預金者のうち、抽選で5万人に2000円を贈るキャンペーンを実施しました。店頭での切り替えは対象外でインターネットバンキングやスマホ向けアプリでの申込と8月末時点で5000円以上の残高があることが条件となっています。

・りそな銀行
 2019年11月1日~2020年4月30日の期間中に、りそなグループアプリセットに無通帳を申し込むことで500ポイントが進呈されました。

このように各銀行とも一時的なコストをかけてでもデジタル通帳への移行を促していることがわかります。それに伴い、デジタル面でのリスクを減らす取り組みも行っています。三菱UFJ銀行のスマートフォンアプリは生体認証(指紋・顔認証)を利用し、パスワードを入力することなくログインでき、一定時間ごとに自動的に変更されるワンタイムパスワードで不正のリスクを低減させています。
みずほ銀行では5月11日~10月9日の期間、端末の位置情報(ジオロケーション)や顔認証技術を活用した「デジタルアイデンティティ(Digital ID)」による「インターネットバンキングにおける本人認証」と「継続的顧客管理(CDD)」のシステム基盤の構築、サービスの実現に向けた実証実験を行っています。

今後も銀行のデジタル化は更に進んでいくと思われます。ただ、災害時には現金が必要な場合も考えられますが、口座の証明書類を印刷することができなかったり、スマートフォンの電源が確保できない場合はすぐに現金が下ろせない可能性もあります。
また、口座の名義人が死亡した場合に預金は凍結されますが、紙の通帳があれば預金の存在自体を把握することはできます。しかし、デジタル通帳の場合は残された家族が預金の存在に気づかない可能性も否定できません。今後、そのようなデメリットの部分を解消する仕組みも必要となってくると思います。