無人でバウムクーヘン焼き上げ AIが職人の“ふわふわ”“しっとり”を再現

ユーハイムはAI技術を活用したオーブン「THEO(テオ)」を開発したと発表しました。THEOはバウムクーヘンを焼くためのオーブンで、焼き色や機械を稼働させる速度などのデータをAIに学習させ、AIがその蓄積した情報をもとにバウムクーヘンの焼き具合を見て調整する仕組みとなっています。1人の職人と同じ食感や焼き色を再現するには、その職人が焼いたバウムクーヘン5~10本分のデータがあれば再現可能です。

THEO開発のきっかけは、5年前に立ち上がった南アフリカのスラム街の子供たちにお菓子を届けるというプロジェクトです。そのプロジェクトを進める上での課題はお菓子の量産化と保存性でした。ユーハイムは食品添加物を使用しないお菓子作りにこだわっています。そこで、職人の技術を自動で再現できる機械があれば、現地でお菓子を製造することができ、添加物を使わずにより多くのお菓子を生産できるのではと考え開発を進めました。

THEOの使ったバウムクーヘンは年明けから店舗導入に向けての実験を進められ、来年の3月に名古屋市にオープンする店舗に導入予定です。今後はTHEOの遠隔操作や消費者がTHEOを使ってバウムクーヘンを焼くなどの実験を進めるとのことです。

─ YODOQの見方───────────────────────────

AIの技術はいろいろなものに活用されており、今回はそのうちの3つを紹介します。

1つ目はAIの画像解析技術を使用して、マグロの尾の断面からマグロの品質を判定する「TUNA SCOPE」です。
「TUNA SCOPE」はディープラーニングの技術で、マグロの断面画像と熟練の職人による評価を大量に学習させており、マグロの身の締まり具合や脂の乗り方から「特上」「上」「普通」の3段階でマグロの品質を評価します。評価時間はわずか数秒で、結果の約90%が目利き職人の評価と一致しているそうです。くら寿司などの回転寿司チェーンでも使用されているシステムです。

2つ目は、画像認識AIを活用した「野生動物検出システム」です。
このシステムはクマを撃退するためのシステムで、カメラやサイレンなどが搭載されています。カメラで周辺を撮影し、動く物体を検知した場合、画像認証AIで物体の判別を行います。動く物体がクマだと判別された場合、強い光とサイレンを発してクマを追い払い、事前に登録されたメールアドレスにクマの出没情報を送信します。今後は検出率の向上に向け、機械学習モデルを改良していくとのことです。

最後に紹介するのは、富士通研究所が開発した、系列データを扱うAIモデルに対する偽装攻撃の検知技術です。
通常、システムが攻撃されたとき、その通信ログが系列データとして残されます。これまでは、通信ログからAIは攻撃を検知できますが、正規の操作をされたタイミングで攻撃された場合、検知できないことがありました。今回開発された技術では、正規の系列データに偽装攻撃のデータを組み合わせたデータを学習したAIモデルと、従来の攻撃データを学習したAIモデルを組み合わせます。その組み合わせたものに対して再度AIが学習を行うことで偽装攻撃への耐性を上げつつ、従来の攻撃データの判定精度低下を抑えています。シミュレーションではこれまでのサイバー攻撃の検知精度は3ポイント低下しましたが、偽装攻撃の検知精度は63ポイント増加しました。今後も実証実験が進められ、2021年度の実用化を目指すとのことです。

AI技術を活用した研究が進む一方、そのAI技術を活用したシステムのセキュリティーをいかに高めるかが、今後の課題となるのではないでしょうか。