放置自転車ワースト返上へ 名古屋市、IT活用を検討

放置自転車台数が全国ワーストの名古屋市が、ITを活用して効率的に撤去するシステムの導入を検討している。「放置が新たな放置を呼ぶ状況」を打開し、汚名返上を図りたい考えだ。
名古屋市は地下鉄が張り巡らされていて、自転車で駅に向かう人が多いにもかかわらず駅前の駐輪場が不足している。市は、自転車を撤去するかどうかを市職員が放置の現場を見て判断するルールにしている。同市中区の栄保管場所などで撤去した自転車を保管しているが、人手が足りず撤去が追い付いていない現状のため、「芝園開発」(東京都)が開発した自転車回収システムを撤去に活用できないか実験した。
見回り役のスタッフが放置されたとみられる自転車に「警告札」を張り、記載されたQRコードと自転車を撮影。
するとデータベースに画像と時間、位置情報などが自動で登録される。15分ほどたっても移動されない場合に、スタッフが事務所にいる市職員に撤去依頼を送信。職員はリモートでデータベースの画像などを確認して、撤去許可を出す仕組みだ。
1人の職員が複数の場所の許可を出せるため、効率良く撤去できた。地域ごとの傾向分析も可能だという。市は数年以内のシステム導入を目指すことにした。

引用:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF203RO0Q1A420C2000000/

─ YODOQの見方───────────────────────────

放置自転車とは、通勤通学や買い物での一時的なものから不法投棄や盗難車の乗り捨てなどによって、駐輪許可された場所以外に放置された自転車のことで、社会問題になっています。

放置自転車の問題点
・交通渋滞や事故の原因となる
・身体障害者や緊急車両の通行の妨げとなる
・治安悪化の原因になる
・街の美観を損なう

放置自転車が社会問題化したのは昭和50年代後半からで、1980年には「自転車の安全利用の促進及び自転車駐輪場整備に関する法律」(旧自転車法)が作られ、平成6年には市区町村での義務と権限を拡大し放置自転車の撤去や処分を行いやすくした「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐輪対策の総合的促進に関する法律」(自転車法)が作られています。法律に基づき、駐輪場の整備や撤去を行った結果、1977年には約59.8万台だった駐輪場の収容台数は、2019年には約7倍の437.4万台にまで増加したことに反比例して、放置自転車の数は最盛期の98.9万台から4.4万台にまで減少しています。

独自の取り組みをしている自治体もあります。
◆東京都中央区・千代田区
区が撤去・管理を行う放置自転車のうち、持ち主からの返還請求のない自転車のうちの一部を協力店で点検・整備を行った上で一般に販売することで、リサイクルしています。

◆東京都板橋区・豊島区
「自転車放置禁止区域」の標識で注意喚起を行い、駐輪場への案内や誘導を行う標識を目立つように設置したり、啓発チラシを自転車へ貼りつけたり、自転車専用の走行レーンを設置するなどの社会実験を行いました。

◆静岡市
行政だけでなく町内会や商店会、大型店などの地域住民と一体となって、「放置自転車等クリーンキャンペーン」を題して街頭での広報活動として、啓発品等の配布や啓発ポスターの貼付、商業施設館内での放送だけでなく、有料駐車場の一時利用を無料開放しました。

◆大阪市住吉区
地域住民が啓発指導員を配備したり、区内の小学生が描いた放置自転車をテーマとした絵を路面シートにして設置しマナー喚起を促しています。

◆豊中市
平面が立体に見える錯覚を利用し、花壇がそこにあるかのようなだまし絵をシートにし駐輪禁止区域に設置することで、きれいなものを汚したくないという心理を利用して放置自転車をしないような対策をしています。

◆東京都江東区
1日利用料金100円の駐輪場を1回利用するごとに1ポイントが貯まり、5ポイント貯まれば、無料駐輪券や駅前のお店で使える割引券、景品がもらえる「ポイント制」を導入することで、地元商店と自転車利用者をつなぎ、地域活性化に役立てています。

上記の功を奏した対策のポイントをまとめると
1、物理的な対策:駐輪場を増やす
2、感情(良心)に訴える:啓発活動、子供の絵や花壇の絵を設置する
3、不利益の提示:放置自転車の撤去
4、お得感の提示:ポイント制
ということになります。以上の点を踏まえて対策することで効果が期待できるのは放置自転車の問題だけではなく、他の問題にも応用できるのではないでしょうか。

参考:https://www.jt-tsushin.jp/article/casestudy_abandoned_bicycle/
参考:https://www.fnn.jp/articles/-/24156
参考:https://jsmcwm.or.jp/journal/files/2012/06/046abe.pdf