VRとユニバーサルデザイン

奈良女子大学と甲南大学の研究チームが月経症状を体験できるVRシステムを開発した。電気刺激による月経痛と、温度刺激による血の漏れ感覚を再現する方法で月経症状を再現する。月経痛を再現するため、ユーザーは腹直筋下部に2枚の電極パッドを装着する。水より粘度が高い血液が皮膚上を移動する感覚を再現するため、温度制御ができるペルチェ素子という素材を使って温かい液体が太ももの上をゆっくりと移動する感覚を再現、ユーザーはペルチェ素子を服の上からゴムバンドで両内股に装着する。
体験デモでは、駅で電車を待つシーン、電車内の椅子を座ったり立ったりするシーン、満員電車で人に挟まれるシーンの3つのシチュエーションを用意、姿勢の変化をトリガーに出血を再現し、その際は月経痛を再現する電気刺激は止め出血の感覚に集中させる。立った状態が続くと、再び電気刺激による月経痛が始まるというもの。
痛みを伴う体験だが、エンターテインメント性をもたせることで体験の敷居を低くした。体験を通して月経症状を考えるきっかけとなることを期待している。

引用:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2112/22/news060.html

─ YODOQの見方───────────────────────────

VRとはVirtual Realityの略で、「人工現実感」や「仮想現実」と訳される。意味としては「限りなく実体験に近い体験が得られる」ということを示す。
一般的なイメージでは、ゴーグル等を用いて視覚・聴覚を再現し、実体験に近い体験をするというものだが、今回紹介したVRシステムは、触覚と痛覚を再現し、月経症状を体験するというものになる。(筆者は一般的なイメージが先行してしまい、記事のシステムがVRシステムと称されていることに違和感を覚えてしまった。同様に感じる方も少なからずいるのではないだろうか。)

VR技術は主にエンターテインメントの分野で注目される機会が多いように感じるが、多様な立場の人々の生活を再現・経験するというものも多く存在している。
例えば、子供の目線を体験するのにVRを用いたり、認知症や自閉症、発達障害をVRを用いて疑似体験することができる。目隠しをして視覚障害の擬似体験を行うような催しがあったりするが、これもVRにあたる。

多様な立場の人々の生活を再現・経験することで、その人の気持ちを理解し寄り添えるようになるのではないかと思う。また、その体験から着想を得て、全ての人が不自由なくより良い生活を送るためのアイデアが生まれることも期待できるのではないかと思う。ユニバーサルデザインの発展にVRが大きく関わってくるのではないかと期待する。