ゲノム編集食品、夏にも解禁

遺伝子を効率よく改変できる「ゲノム編集」という技術を使った食品が、早ければ今夏にも市場に流通することになった。厚生労働省が18日、ゲノム編集で開発した一部の食品は従来の品種改良と同じであるとして、同省の安全審査を受けなくても届出だけすれば流通を認める方針を固めた。ただゲノム編集食品を巡っては安全性を疑問視する消費者もおり、正しい情報を伝える食品表示のあり方などが課題になりそうだ。

ゲノム編集とは遺伝子を切断することで特定の性質を無くし、消費者にとってより良い食品に品種改良する技術の一つである。
自然界で起こっている突然変異と見分けがつかないことから厚生労働省は届出だけで販売を認めることになった。
ただ企業側としては消費者の不安解消が先決と見る場合が多く、今夏に市場に流通するかどうかは微妙な状況にある。ほんとうに危険性が無いのか、また各国の対応などを見てルール作りに取り組むことが重要である。

引用:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42626760Y9A310C1EA2000/(日本経済新聞)

─ YODOQの見方───────────────────────────

「ゲノム編集」を議論する時、「遺伝子組み換え」との違いについて理解しておくことが重要である。
「遺伝子組み換え」とは、変化を期待する特定の遺伝子を取り出し、細菌などにその遺伝子を組み込み、突然変異を起こさせたい対象の物質に細菌ごと組み込む方法であり、細菌のような媒介を使う為どのようなことが起こるのかが解明されておらず、食品の安全性が担保できないことが問題である。
それに比べ「ゲノム編集」については、無くしたい特定の遺伝子を酵素で切除するだけなので、自然界で起こる突然変異と類似であるという。しかしながら、「ゲノム編集」と言えど先ほど紹介した切除だけでなく、大きく3つの方法に分かれている。

1、先ほど説明した切除する方法
この方法では例えば、筋肉が太ることを抑制する遺伝子を切除し、1.2倍に太るタイを作ることが実証されている。

2、切除に加え変化を起こさせたい遺伝子パーツを数個、元の生物に導入する方法
この方法を使うと切除だけの時よりもより確実に目指す変異を起こさせることができる。

3、切除したうえ、比較的大きな遺伝子を外部から導入する方法
より大きな遺伝子を導入することから大きな形質変化を期待できる。

3つ目の方法はこれまでの「遺伝子組み換え」と近い方法であり、規制の対象となっている。

また、「ゲノム編集」への各国の対応も異なっている。

アメリカでは「ゲノム編集」で生まれた農産物を規制せず企業の判断に任せている。
アルゼンチンやチリなどの南米諸国では日本と同じように1つ目、2つ目については規制の対象外としている。
EUではすべて「遺伝子組み換え」食品として規制している。
ニュージーランドも同じく規制している。
オーストラリアは日本同様の規制緩和に動いている途中だ。

考えられる問題点としては、

「ゲノム編集」は遺伝子組み換えと比べると、より効率的で、より自然にみえる育種方法だと言えるが、過程において起こりうるオフターゲットと言われる予期していない変化についてどう対応するのか。実験室内で必要か必要でないかを取捨選択して必要な物だけを残していくのであるが、このようなものが実際の試験栽培に利用され外部に漏れることで予期せぬ深刻な問題を引き起こす可能性は大いにある。
第二に、「ゲノム編集」は自然界では滅多に生じない遺伝子変異をもった作物品種を、短期間に次々と開発できるため、環境全体への影響までを考慮に入れ取捨選択することが難しいと考えられ、突然あらわれた外来品種に従来の品種が脅かされ、重大な問題を引き起こすことも考えられる。

世界中から注目されている「ゲノム編集」について、遅れをとりたくないという政府の方針と消費者の安全性への危惧など、バランスを取りながら進めなければいけないため、難しい舵取りが必要になるだろう。