国立博物館 なぜ今値上げ?

1月30日に独立行政法人国立文化財機構が、東京・京都・奈良・九州の国立博物館で4月から平常展の観覧料金を一斉に値上げすることを発表し、ネット上にはさまざまな反響が寄せられています。値上げの理由は「コスト分析の結果」だそうです。現在、修理が必要な文化財が増えたり、「文化財の活用」のための多言語解説や先端技術を用いての展示のために必要な費用は増加していますが、平常展に必要な直接的なランニングコストにまで、国からの運営費交付金が補填されている状況に危機感を覚え、平常展は観覧料収入で賄えるようにするための決断だとのことです。

4月からの平常展観覧料
東京国立博物館
    一般    620円→1000円
   大学生   420円→500円
京都・奈良国立博物館
   一般     520円→700円
   大学生   260円→350円
九州国立博物館
   一般     430円→700円
   大学生   130円→350円

展示品の入替や人件費・光熱費・清掃費など、平常展の運営に必要なコストを算出し、年間の有料入場者数で割ると千円程度だったため、今回の観覧料金が決定されました。70歳以上のシニアと高校生以下は無料のままで、特別展入場者は平常展も無料で観覧できるシステムは変更されません。

引用:https://www.asahi.com/articles/ASN2G6W45N2DUCVL03T.html

─ YODOQの見方───────────────────────────

博物館について規定している博物館法というものがあり、それには

「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関となっています。公立博物館は原則、無料で、維持運営のためにやむを得ない事情がある場合にのみ対価を徴収できるとされています。

イギリスの国立大英博物館は平常展は無料、フランスの国立ルーブル博物館は18歳未満は無料ですが、それ以外は15ユーロ(約1800円)の入場料となっていて、このように国立博物館の観覧料に関しては国によっても様々です。
また、日本は他国に比べ文化予算が少ないともいわれています。国家予算に占める文化予算の割合は、イギリス0.2%、フランスは1.06%、韓国0.87%に対し日本は0.11%です。(2011年度)

令和2年の文化庁の予算の内訳は
 ・文化財の確実な継承に向けた保存・活用の推進
 ・文化芸術立国に向けた文化芸術の創造・発展と人材育成
 ・文化発信を支える基盤の整備・充実
 ・東日本大震災復興特別会計
 ・国際観光旅客税財源事業
となっています。

東京国立博物館には、国宝・重要文化財の美術工芸品を含む12万件を所蔵しています。平常展でも仏像や刀剣、浮世絵、近代美術を観覧することができ、2018年度の平常展の有料観覧者数は69万人にも上ります。
予算には限りがあり、国の予算だけに頼るよりも、ある程度は受益者負担で観覧料で賄えるように方向転換するのも仕方ないことだと思います。今後、国立博物館にならい、市などの自治体が運営する博物館にも値上げの提案がなされるかもしれません。

参考:https://gentosha-go.com/articles/-/21773
参考:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/yosan/pdf/r2_gaiyo.pdf