コンビニ 共同配送 実験へ

内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)課題「スマート物流サービス」の実現に向け、経済産業省の資金支援のもと、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社ファミリーマート、株式会社ローソンの大手コンビニ3社は7月22日、同じトラックを使って各社の店舗へのチェーン横断的な商品配送を行う共同配送の実証実験を8月1日から1週間行うと発表しました。
現在は各社が、それぞれのトラックで独自に配送していますが、物流業界の運転手不足が深刻化するなか、物流網の維持に向けて共同配送を本格的に導入できないかを検証します。実験では、江東区にあるSGホールディングスの大型物流施設「X(エックス)フロンティア」に3社共同の配送センターを構え、各社のセンターから商品を移送し、湾岸部エリアの近接した店舗(セブン‐イレブン13店舗、ローソン14店舗、ファミリーマート13店舗の合計40店舗)を対象に飲料や菓子、日用雑貨などの常温商品を同じトラックで最も効率のよいルートを通って配送するというものです。これにより、13台のトラックが走るところを9台に減らし、積載率も2割高められるとしています。冷蔵やチルドなどの商品は対象外で、従来通り各社のトラックで配送します。
コンビニは全国で56,000店舗あり、このうち大手3社が9割を占め、店舗網の維持には効率的な物流が欠かせないため、各社が個別に効率的な配送を模索してきましたが、運転手不足のなかコストもかさみ、特に過疎地では物流網の維持が課題になっています。
共同配送については各社のノウハウや商品の違いなどからハードルが高いとされていますが、今後導入が広がれば、二酸化炭素排出量の削減につながることも期待されています。
また、 一部の商品を共同物流センターに保管し店舗別にピッキングを行う共同在庫の可能性も検討します。

引用:https://www.asahi.com/articles/DA3S14559615.html

─ YODOQの見方───────────────────────────

鉄道貨物協会「平成30年度本部委員会報告書」によると、2017年度時点で運転手は約10万人不足していると報告されていますが、2028年度では約28万人が不足すると試算されています。また、国土交通省の「自動車輸送統計調査」では2000年には50%だった積載率が2018年度には40%に落ちているとのことです。
共同配送とは、荷主が協力しあってそれぞれの商品を同じトラックやコンテナに積んで配送することで、運転手不足や積載率の低下という物流危機を乗り越えるための取り組みの一つです。

共同配送のメリット
・運転手不足の解消につながる
・輸送費の削減
・排気ガス・二酸化炭素排出の削減

共同配送のデメリット
・荷物の管理が難しくなる
・納品時間が固定化してしまう
・責任の所在がわからなくなってしまう

上記は今回の大手コンビニ3社での共同配送の実証実験でも当てはまります。各社が運用している物流システムをどのようにとり入れていくのか、納品時間の調整や誤配リスクへの対応、運転手に課される負担など解決すべき課題は数多く存在します。
しかし、他の業界に目を向けてみるとアサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリービールの4社は2017年、JR貨物、日本通運と連携し、北海道道東エリア向けに共同配送を開始しています。また、味の素、カゴメ、Mizkan、日清オイリオグループ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社の食品メーカー6社は2016年4月から北海道地区で共同配送をスタートさせ、2017年3月には6社のうち4社(味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社)で北海道地区の物流を手掛ける合弁会社「F-LINE」を発足させています。医療品メーカーや化学メーカーでも共同配送は行われています。
このように業界は違っても先行の成功パターンがあるので、建前だけでなく3社が協調できれば実際の運用も実現する可能性もあるのではないかと思います。
ただ、その成功がコンビニ本部のコストメリットになるだけでなく、運送会社やそこで働く運転手、コンビニオーナーや従業員にとっても業務の効率化や待遇改善につながるものであってほしいです。
大手コンビニ3社は災害対策基本法に基づく指定公共機関にも指定され、災害が起こった時には社会インフラとしての重要な役割が期待されています。その要である物流システムが今後どうなるのか、今回の実証実験の結果に注目したいと思います。

参考:https://iotnews.jp/archives/141459
参考:http://cargo-news.co.jp/cargo-news-main/482
参考:https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722004/20200722004.html