本当は怖いスマホの話

1月6日の米議会議事堂襲撃に怒りを覚えたある人物(情報源)がニューヨークタイムズに持ち込んだデータにより、スマートフォンの匿名化された位置データから、事件当時議事堂内にあった130台のスマートフォンを特定した。同一IDを持つ別のデータと照合することでスマホ所有者に関する実名、住所、電話番号、メールアドレスなどを数秒で特定できたという。
このように保有するIDデータベースを他のデータベースと照合し、個人を特定するサービスを提供する企業が存在するが、現在の米国にこのデータの使用を規制する法律が全くない。また、企業に対し、データの使い方や保存期間の開示を義務付ける法律もないとのこと。

IT Media News スマートフォンのモバイル広告IDと位置情報データで個人は特定できる

─ YODOQの見方───────────────────────────

このようにスマートフォンを取り巻く技術や個人情報関連の規制は、ときに恐ろしい現実をともなってニュースとなることがあります。
スマートフォンが「便利で手放せないもの」であることは誰もが認めると思います。それにしてもなぜ、こんな「怖いもの」がこれほどまでに普及しているのでしょうか?

「スマホ脳」はスウェーデンの精神科医が執筆し、世界的にベストセラーとなった本です。
そこでは脳科学の観点からこの「なぜ」に対する回答が示唆されています。

新潮社 書籍詳細:スマホ脳 世界的ベストセラー上陸! スティーブ・ジョブズはわが子になぜiPadを触らせなかったのか? 最新研究が示す恐るべき真実。

人間の脳は10万年前の狩猟採集生活時点から大きく変わっておらず、当時の過酷な環境を生き延びるために、複雑な仕組みを備えています。
・危険信号に敏感になる「ストレス系」
・新奇なものに興味を持つ「報酬系」

スマホを通じてアクセスするSNSなどのインターネットコンテンツは、常にユーザーの注意を惹き、スクリーンに釘付けにすることで運営企業に巨万の富をもたらします。フェイスブックやツイッターは実際に脳科学者の研究成果を実装に取り入れ、これらの脳の仕組みを利用して人間の本能をあやつるように設計されているそうです。

スマホが身近にあるだけで「気になって触らずにはいられない」気分になることはないでしょうか?
人により個人差はありますが、こういった症状は、脳の特性による、抗えない性質のようです。
10万年前の自然界ではありえない刺激を頻繁・過剰に受けることで、現代人には依存症やうつの症状が発症するため、スマホは見方によっては「ドラッグと同等」であるとの指摘もあります。
精神科外来の患者数を調べると、2010年から2016年の間に若者の受診が急増したというデータがあり、iPhoneがブレイクしてスマホが急激に普及した時期と重なっています。
スマートフォンやSNSの開発に関わったシリコンバレーの著名人の中にも、その強力な効能を恐れ、自身や家族から遠ざけている人も多数いるようです。

スマートフォン普及の要因は、ただ「便利な道具だから」という一言では片付きそうにありません。
便利な道具ではありますが、我々ユーザーはその恐ろしさを知り、上手に付き合っていく事が必要ではないでしょうか。
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備考

アルフレッド・ノーベルのダイナマイトやオッペンハイマー博士の原子爆弾のように、「発明したことを後悔するほどの害悪」を人々にもたらしつつあるのでしょうか?
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