統計不正の背景にある”デジタル軽視”の罪
12月末に厚生労働省が実施している毎月勤労統計調査が不適切だったことが発覚して以降、経済産業省の石油統計速報値など、他の統計でも誤りや不正があったことが明らかになってきています。厚生労働省の調査では、「規模500人以上事業所は全数調査」のはずが東京では約3分の1の500件の抽出調査となっていました。
民間企業では当たり前に行われている「デジタル化」をすることで、紙ベースと比べて、データの保管や不正の発見も容易になるメリットがあります。
今後、政府は統計制度に関するガバナンスを確立し、これまでの統計による判断を見直す必要があります。
引用:https://president.jp/articles/-/27563
参考:統計不正、段階を追って悪質化・・・問題の本質を分けて考える必要
─ YODOQの見方───────────────────────────
この騒動では、調査を不正に行っていたこと、また不正を隠蔽したことが問題になっています。
しかし不正を行っていなくても、調査の仕方や見せ方次第で、結果や印象が変わってしまうことも少なくありません。
たとえばテレビや広告などで提示されるアンケート結果では、制作側が欲しい結果をもらえるように、そもそも調査対象を絞っていたり、回答を誘導するような問いかけでアンケートしていることもあります。
調査において回答に偏りを生じさせる要因となるものをバイアスと言い、特に、本来無作為に選ぶべき標本(サンプル)に偏りを起こしてしまうものをサンプリングバイアス(選択バイアス)と言います。
データを用いて表やグラフを作る場合には、基本的に調査対象や方法が注記されていますので、そこから本当に正しく調査されているのかを判断することができます。
参考:データはウソをつく―科学的な社会調査の方法 (ちくまプリマー新書)
また、データの見せ方で印象を変えることもできます。
×見せたい数値を3Dグラフにして視覚的に大きく見せる
×年代によって調査人数が違うのに、年代ごとの割合を計算する
そもそも不正な調査だった場合は、不正を判断することは難しいですが、見せ方の問題であれば、見る側が注意することで防ぐことができます。
データやグラフだけを見て判断するのではなく、元になった調査や表示のさせ方にも注意してみてください。
─ 補足 ──────────────────────────────
毎月勤労統計
雇用や給与、労働時間の変動を調べる国の重要な統計。現金給与の額や、物価変動の影響を差し引いた実質賃金などが含まれ、国内総生産(GDP)の算出にも用いられる。