児童虐待防止にIT利用

京都府南丹市の要保護児童対策地域協議会は、児童虐待を防止するためにサイボウズの「Kintone」を用いて、市役所や学校などの関係者が情報共有できるシステムを導入。5か月の試験導入を経て、2019年7月1日から本格的な運用を開始した。
Kintoneでは現在、虐待を受けている可能性のある対象児童のリスト管理、それぞれの経過記録、学校や保育園/幼稚園の出欠状況記録の3つのアプリが稼働。市役所の子育て支援課、学校・保育所などの関係者がこれらの情報を共有することで、児童虐待の可能性がある場合の迅速な対応が可能になる。
今回のKintoneの採用では、サイボウズが提供する「児童虐待防止特別プラン」を利用。このプランでは、児童虐待防止に携わる人々の情報共有であれば、Kintoneなどのサイボウズのクラウドサービスを5年間無料で利用できる。

引用:https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/070101213/

─ YODOQの見方───────────────────────────

まず、なぜサイボウズがこの「児童虐待防止特別プラン」を開始するに至ったか。

参考:「おねがいゆるして」のメモに心を揺さぶられた社長が決断したこと

サイボウズの青野社長は2018年に東京都目黒区で起きた当時5歳の船戸結愛さんが両親から暴力をふるわれ亡くなった事件を知り、3人の子供を持つ父親としてもこの事件に注目。後日、児童相談所がFAXで情報伝達を行っていることを知った政府が、迅速かつ確実に情報を伝達するために、情報共有の方法をFAXからメーリングリストに見直す方針を示したのに対し、青野社長はその翌日には、児童相談所向けのクラウドサービスの無償プランの提供を表明した。さらに、その1週間後には特別プランを公開、同時に導入の相談窓口を設置した。青野社長曰く、サイボウズが創業した1997年から21年間ずっと自治体の情報システム改革について言い続けてきたそう。それでもいっこうに変わらないので、自分たちでやってしまおうということだろう。

このように学校や児童相談所など、関係各所の情報共有の仕組みが良くないという声は多くみられ、それに対する策としてサイボウズは特別プラン公開に踏み切った形になる。

他に虐待が減らない理由として、児童相談所で働く児童福祉士の不足、その質が低いことが多くの記事であげられていた。政府は児童福祉士の数を2020年度までに約3000人の現状から約2000人増やす方針だが、職員が足りない現状で実現できるかどうかは疑問である。

そこでAIを使ったシステムを導入することで、人材不足をカバーしようという動きがあるので最後にこちらを紹介したい。

参考:https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2019/pr20190528/pr20190528.html

三重県と産業技術総合研究所は2019年度から、児童虐待を防ぐために、子どもの一時保護が必要であるかどうかを判断するAIを含む端末を初めて児童相談所などの現場に配備するそうだ。三重県では、一時保護が必要であるかどうかを現場で判断するための指標としてまとめた「リスクアセスメントシート」を2013年から導入。今回配備する端末にこのシートと同じ項目を入力し、これまでに蓄積した約5千万件のデータを基にAIがその場で分析し、再発率などを割り出し、一時保護が必要かを判断することができる。
また、身体の傷もカメラで撮影することによりデータを蓄積し、将来的にはその傷が虐待によるものかを判断できるようになるそうだ。
これにより今まで長年現場で働かないと判断できないようなことに対して、経験が浅い人でも対応できるようになるため、児童福祉士一人一人の負担は軽減し、また、児童福祉士になるハードルも低くなるだろう。