会話のコンテキストを合わせる

技術と人のあいだ|大阪のシステム開発会社ヨドックの技術コラム

ハイコンテキストな会話

会議中、Excelやスプレッドシートの画面を見ながら説明している人が「一番左の“行”ですが……」と言った瞬間、「それ、正しくは“列”ですよね」と心の中で突っ込んだ経験はないでしょうか。

けれど、多くの場合、そのまま話は止まらず進んでいきます。聞き手も「言いたいことは分かるから」と脳内で補正し、場の流れを優先する。これは日本の職場によくみられる、典型的な“ハイコンテキスト”なコミュニケーションです。言葉そのものの正確性よりも、前後の流れや共有された前提によって、互いに意味を補完し合っている状態と言えます。

長く同じチームで仕事をしていると、「あれ」「例の件」「いつもの感じで」で通じることが少なくありません。しかし、一歩外に出ると、この「伝わっているつもり」は意外な落とし穴になります。

コンテキストが合わない場面

たとえば、大阪でシステム開発の導入を検討されるお客様との要件定義。
「前と同じように、いい感じにしておいて」という言葉をそのまま受け取ると、いざ画面ができた後になって「思っていたのと違う」という大きなすれ違いが起きがちです。
また、就職活動中の学生さんとの面接の場でも、「サークルでリーダーを務め、コミュニケーション能力には自信があります」という言葉の奥にある具体的な経験値や行動特性が、面接官の前提と噛み合っていないことがよくあります。

これらはすべて、話し手と聞き手のコンテキスト(文脈や背景)が揃っていない状態です。前提が共有されていない相手に対して、無意識のうちに身内向けの“ハイコンテキスト”な伝え方をしてしまうため、理解にズレが生まれるのです。

私たちエンジニアは、普段から究極の“ローコンテキスト”であるコンピュータと向き合っています。プログラミング言語は「誰が」「何を」「どうする」を1から10まで明確に、一切の省略なく指示しなければ動きません。少しでも文脈を飛ばせば、容赦なくエラーが返ってきます。

一方で、人間の会話、特に日本語は視点を自然に切り替えながら進む、いわば「カメラワークのような言語」です。
「私は」を毎回言わなくても成立する代わりに、聞き手側に多大な“察する力”が求められます。
コンピュータには通じない曖昧な言葉でも、人間同士なら「なんとなく分かった気」になってしまう。
ここがコミュニケーションの一番の難しさです。

コンテキストを合わせてみる

行き違いを防ぐためには、一度だけでも意識して“ローコンテキスト寄り”に話してみる価値があります。

  • 主語・動詞・目的語を意識して、構造的に説明する
  • 「つまり○○という意味ですね」と自分の言葉で言い換えて確認する
  • 「ここまでで、認識のズレはないですか?」とこまめにすり合わせをする
  • 相手が見えている情報と、自分が見えている情報の差を想像する

こうした小さな工夫の積み重ねで、伝わり方は劇的に変わります。
特に関西、とりわけ商人の町である大阪は、「阿吽の呼吸」や「ノリと勢い」といった、高度でハイコンテキストなコミュニケーションが愛される土地柄です。
しかし、そんな人情味あふれる大阪でシステム開発という厳格な仕事をしていると、「技術力」だけでは前に進まない場面を何度も見かけます。
設計レビュー、要件確認、障害対応、そしてお客様へのご説明――どれも結局は、曖昧な人間の言葉を紐解き、確実なシステムへと落とし込んでいく“人と人の理解合わせ”に他なりません。

「通じているはず」と「本当に通じている」の間には、意外と大きな差があります。
だからこそ、少しだけ丁寧に言葉を置いてみる。相手の前提に立って、伝え方をチューニングする。
その地道な積み重ねが、チームの空気を良くし、お客様との信頼を築き、結果として良いシステムを創り上げる第一歩になるのだと思います。
だからこそ私たちは、技術だけでなく対話を重視しています。

関連記事

  

※本コラム『技術と人のあいだ』は、日々の業務でお客様への提案や若手エンジニアへの説明を行う筆者が綴る連載です。大阪でシステム開発の仕事に向き合う中で、限られた時間では伝えきれない「これも知っておいてほしいな」という現場の気づきを、ここに少しずつ書き留めていきます。

お問い合わせ

CONTACT

業務システムに関するお困りごと、WEBサイトの制作など、
まずはお気軽にお問い合わせください。

会員サイト
CONTACT
06-6305-2278
採用サイトはこちらRECRUIT