「コロナ禍」という言葉の意味

その年話題となった新語・流行語を決定する年末恒例の『2020 ユーキャン新語・流行語大賞』(現代用語の基礎知識選)が12/1に発表され、“年間大賞”に「3密」が輝いた。トップ10には「愛の不時着」「あつ森(あつまれどうぶつの森)」「アベノマスク」「アマビエ」「オンライン○○」「鬼滅の刃」「GoToキャンペーン」「3密」「ソロキャンプ」「フワちゃん」が選出されました。
また、この12/14に清水寺で書かれた今年の漢字は「密」。2位になったのが「禍」でした。
今日の話題は、この「禍」「コロナ禍」という言葉についてです。
禍は「わざわい」という言葉です。今でこそ誰しもが知っている漢字でしょうが、使われ始めた時にこの読みを聞いてこの漢字を思い浮かべられなかった方も多かったのではないかと思います。先程の流行語大賞の言葉が、いかにも流行語であり造語の類であるのに対し、~禍というのは、古くから使われ、近代においてはほぼお目にかからなくなった由緒正しい言葉です。それが突如使われ始め、当然のように使われている。そのことがどうしても気がかりで調べてみました。

─ YODOQの見方───────────────────────────

この半年ほどの間に広く浸透した「コロナ禍」の「禍」とは、わざわい、災難のこと。新型コロナウイルスが人々に被害を与えていることを示しているわけで、たしかに字面からも強い不安や市民生活への影響の大きさが感じられる。
「禍」のつくことばは、古くから「戦禍」「輪禍」「舌禍」といった漢語の形で使われてきた。ちなみに輪禍とは交通事故のことで、舌禍についてはいまなら「失言」と言い表すほうが身近かもしれない。
なぜ「コロナ禍」という言葉が使われるようになったのか? 端的にいえば、「簡潔な表現が必要とされたから」ということのようだ。
「新型コロナウイルス感染拡大の影響で……」というように書き出しが長くなってしまうことを避けようと、新聞を含めた活字メディアがこの合成語を使い始めたわけである。
なお、禍と同じように「わざわい」と訓読みする字に「災」がある。「災が主に運命による災害を指すのに対して、禍は人間の営みによって起こされるものまで含めていうのが、この二つの違い」とのことである。と聞くと「新型コロナウイルスは人間の営みによって起こったものか?」という疑問も出そうだが、「人間の営みによって起こされるもの“まで含めて”いう」というところがポイントになるのかもしれない。やはり日本語は複雑で、そして奥深い。

いつ頃から使い始められたか、どのメディアが最初に使い始めたかを調べると2020年2月後半(16日~29日)だ。 この期間、「コロナ禍」を使った記事は20件である。そして、そのうち16件がスポーツ紙・夕刊紙だ。最も早いのはサンスポだが、特に注目は、阪神でおなじみデイリーである。
26日付の紙面で、1面トップに上の「野球もコロナ禍」の大見出しを打った。これを追いかける格好で、ほかのスポーツ紙も積極的に「コロナ禍」を見出しにするように。
メディアの世界では、「コロナ禍」という言葉はまずスポーツ紙が先行し、他のメディアがそれを追いかけた――要するに真似した、と言っていい。
しかし、なんでスポーツ紙が?スポーツ紙の新聞記者によると
「格闘技で、試合中などに起きる事故のことを『リング禍』って言うんです。その世界ではよく使う言葉だから、スポーツ紙の人間なら知ってるはず。それが関係あるのかもしれません」とのことだ。

もうひとつ「コロナ禍」と同じような言葉で気になるのが「忖度」という言葉です。これも由緒正しい言葉が、世相を表す片寄った使われ方をしている気がしてなりません。

忖度(そんたく)は、他人の心情を推し量ること、また、推し量って相手に配慮することである「忖」「度」いずれの文字も「はかる」の意味を含む。
2017年には政治問題に関連して広く使用され、同年の「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれた。
毎日新聞の記事によれば、1990年代には「忖度」という言葉は、脳死や臓器移植といった文脈でしばしば用いられていたが、この際もやはり患者の生前の意思を推量するというもともとの意味で使用されていた。ところが、1997年夏の時点になると、毎日新聞の記事においても、小沢チルドレンが小沢一郎の意向を「忖度」するというような記述が見つかり、上位者の意向を推し量る意味合いでの「忖度」の用例が見つかった。政治家に「忖度」という言葉が初めて使われた事例である。
2017年2月に表面化した森友学園問題をめぐって、同年3月23日、同学園の籠池理事長が証人喚問ののちに行った記者会見で、「口利きはしていない。忖度をしたということでしょう」と発言した。これにより、この言葉は同問題に関する報道で多用されるようになった。

つまり政治的なあいまいな表現として、ネガティブワードとして広がっていったということです。
ここでもう一度本来の意味に戻ると、他人の心情を推し量ること、決して間違った使い方ではないのですが、ネガティブなだけの言葉ではないわけです。
最後に、流行語大賞に出てきた造語のような類についてはいいと思うのですが、本来の意味を持った言葉については、その意味を一度きちん調べてみたいものだと思いました。
引用:朝日新聞校閲センターが教える日本語の使い方
Jcastニュース
wikipedia 忖度