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キャッシュについてのやりとり
「キャッシュが残っているので、Ctrl+Shift+F5で再確認してください」
システムやホームページの不具合を問い合わせたとき、こんな返答を受けたことはありませんか。言われた通りに操作すると確かに直る。でも「キャッシュとは何か」と聞かれると、うまく説明できない。なんとなく“溜まっていると不具合の原因になるもの”という印象だけが残る――これは多くのユーザーに共通する感覚ではないでしょうか。
キャッシュ(cache)という言葉は、もともとフランス語で「隠し場所」という意味だそうです。コンピュータの世界でも基本は同じで、「よく使うデータを、すぐ取り出せる場所に隠しておく仕組み」を指します。
たとえばホームページの画像やデザイン情報。毎回サーバーから取得していては表示が遅くなります。そこでブラウザは、一度読み込んだデータを手元に保存します。次回はその“隠し場所”から取り出すため、表示が速くなる。これはシステム開発の現場ではごく一般的な高速化手法です。
問題が起きるのは、その隠しておいた情報が古くなったときです。
サイトを更新したのに、ユーザーの画面では変わっていない。開発側では修正済みでも、利用者側では旧データが表示されている。こうした“反映されない”問題は、システム開発において非常によくあるケースです。
ここに、技術者とユーザーの認識の差があります。
システム開発に携わる側にとって、キャッシュは前提知識です。動作確認もキャッシュの仕組みを理解したうえで行っています。しかしユーザーは、その前提を共有していません。「こちらでは確認済みです」と伝えても、ユーザーの画面ではまだ古い状態、ということが起きます。
技術者から見れば“正常”。
ユーザーから見れば“直っていない”。
このすれ違いは、技術力の問題ではなく、説明の不足から生まれます。
「キャッシュの影響かもしれません。最新情報を読み直してみてください」
この一言があるだけで、ユーザーの納得感は大きく変わります。システム開発は、プログラムを書くことだけではありません。仕組みを、相手の立場で伝えることも含まれます。
キャッシュは単なる“隠し場所”。
ですが、その存在を共有できるかどうかで、コミュニケーションの質は変わります。
システム開発やホームページ制作において重要なのは、技術そのものだけではありません。
技術者とユーザーの間にある前提知識のギャップを、どう埋めるか。
キャッシュの話は、その基本を思い出させてくれる、小さな題材なのです。
※本コラム『技術と人のあいだ』では、日々の業務で、お客様への提案や若手エンジニアへの説明をする機会が多くあります。大阪でシステム開発の仕事に向き合う日々の中で、限られた時間では伝えきれないことや、「これも知っておいてほしいな」「前にも同じ話をしたな」と感じることを、ここに少しずつ書き留めていきます。

